本論文はパプア・ニューギニアのニューブリテン島で話されるアタ語の音韻論および母音の音響分析である。分析方法は伝統的な記述言語学の聴音音声学により同言語の音韻体系を記述し、その結果をコンピュータ解析による音響分析の観点から検証した。
アタ語の母音体系は5母音である。音響分析では各母音について大規模なサンプルを摂取し、音声学および音韻論の母音記述の代表的パラーメータである「母音の高さ(hight)」および「後方性(backness)」についてスペクトログラフにより第1フォルマント周波数と第2フォルマント周波数との相関関係について統計処理をもとに相関関係を考察した。音響分析では母音のおかれる環境、鼻母音化、ストレスとの相関関係についても考察した。
音響分析の結果、アタ語の語レベルのストレスはストレスについての音響音声学
の主要な3つのパラメータである、強さ、ピッチ、長さのうちピッチが主要な役
割を果たしていることがわかった。また一般に言語音響類型論的に母音の二つの
パラーメータのうち母音の高さ(hight)がストレスを持つ環境にある母音とス
トレスを持たない環境にある母音の区別のうえで重要な役割を果たすという定説
があるが、アタ語の口舌母音では必ずしもそれが当てはまらす、後方性
(backness)のパラメータにストレスおよび非ストレスの相関関係が現れること
が考察された。